私は鳥だとカラスが好きだ
カラスの濡羽色と言われる
少し青みがかったような
黒い羽がとても綺麗な鳥だ
神の使いの八咫烏の
モチーフになるくらい
賢い鳥だけど
鳴き声だけは汚いのは
天は二物を与えずの
典型例だ
花はなんでも好きだけど
今の時期は菖蒲(アヤメ)が特に好きだ
水辺にシュッと伸びる葉と茎に
紫の花が凛と咲く
群生地だと圧巻であるが
ほんの数輪野山に咲く
菖蒲を見つけると
ことさら嬉しい
色は透明が好きだ
触れられるのにすり抜ける
見ようとしないと見られない
そんな空気が
ここに確かにあるように
意識の外にひっそりと
ある色だから
季節は初夏が好きだ
北陸の夏はカラッとしている
日が伸びて朝は涼しく明るい
梅雨の終わりと共に
鳥のさえずりが聞こえてくる
セミが鳴き始める前の
朝の空気は澄んでいて
キラキラした初夏の朝が好きだ
沢山好きなものがあるけれど
「〇〇が好きなんでしょ」
と言われたら少し困る
あなたが咀嚼して飲み込んだ世界と
私の飲み込んだ世界は違うし
あなたの好きと私の好きも
きっと違うので
あなたの好きはあなたのもので
私の好きは私のものなので
私はカラスが好きだ
